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教授からのご挨拶

平成23年の設立から当科は10年目を迎えました。
ホームページリニューアルにともない、改めて皆さまにご挨拶いたします。

当科は、設立時より「腎臓病を治る病気にする」ことを柱に、臨床、研究、教育に携わってまいりました。そして、近年は、それに加えて、「腎臓病患者さんの総合的医療」をもう1つの柱としてきました。

この 「2つの柱」 について少しご説明いたします。

1つ目の柱:「腎臓病を治る病気にするために」

腎臓病学の理解はこの10年でめざましく進歩しました。それとともに、腎臓内科医の担当する患者さんの範囲も大きく拡大しました。私が大学を卒業した頃には腎炎・ネフローゼが主たる対象疾患でしたが、現在は血液・腹膜透析や移植、糖尿病性腎臓病、ICU Nephrologyをはじめとする急性腎障害やOnconephrology(後述)といった新領域も腎臓内科医の守備範囲となり、腎臓病学は拡大を続けています。

しかしながら腎臓病に罹患するメカニズムや腎臓病が進行するメカニズムにはまだ不明な点が多く、根本的な治療薬開発が遅れています。
当科では腎臓病の成因や進展メカニズム解明に真正面から取り組み、設立以後、下記を明らかにしてきました。

腎臓病が進行した際の共通所見である線維化と腎性貧血のメカニズム
腎臓病が進行した際の共通所見である線維化と腎性貧血のメカニズム
- Asada, Yanagita, et al. J Clin Invest. 2011;121:3981.
急性腎障害からの回復メカニズム

急性腎障害からの回復メカニズム
- Endo, Yanagita, et al. J Pathol. 2015;236:251.
急性腎障害から慢性腎臓病へと移行するメカニズム

急性腎障害から慢性腎臓病へと移行するメカニズム
- Takaori, Yanagita, et al. J Am Soc Nephrol. 2016;27:2393.
高齢者腎臓病が治りにくいメカニズム

高齢者腎臓病が治りにくいメカニズム
- Sato, Yanagita, et al. JCI Insight. 2016;1:e87680.

※外部サイトへ飛びます。

当科では、これらの基礎研究で得られた知見をもとに、製薬企業とUnder One Roofで取り組む創薬プロジェクト、TMKプロジェクト(※外部サイトへ飛びます。)を立ち上げ、日夜創薬を目指して邁進しております。

当科ではこういった基礎研究に加えて、AI, ICTを用いた新しい腎臓病学にも取り組んでいます。腎臓病は、その臓器機能がCr(クレアチニン)というたった1つの検査値で表せる点でAIやICTと極めて相性が良い領域です。当科では、ビッグデータ医科学講座(※外部サイトへ飛びます。)奥野教授との共同研究によって、腎機能悪化症例を自動感知するシステム開発や腎病理診断の自動化(Virtual Pathologist)にも取り組んでいます。
腎臓病領域における新しい医療を確立し、発信することが私達の目標です。

2つ目の柱:「腎臓病患者さんの総合的医療」

1つ目の柱でお示ししましたように、当科は「腎臓病を治る病気にするために」腎臓病のメカニズム解明と創薬に正面から取り組んでいますが、新薬として患者さんのもとに届くには長い年月がかかります。一方で、すでに腎臓病に罹患している患者さんは大変多く、10人に1人とも言われています。

すでに腎臓病に罹患した患者さんに対して、私達は、何ができるのか。

これが講座設立以来の命題でした。

私達は、現時点で最高の医療を提供する腎臓内科を目指すとともに、患者さんのもつ多くの疾患を総合的に診療する役目を果たしたいと思っています。

2つ目の柱:「腎臓病患者さんの総合的医療」

2017年NHKスペシャル「人体」でも取り上げられたように、腎臓は臓器連関の要であり、腎臓が悪くなると、心臓、肺、脳、腸といったさまざまな臓器が障害されることが知られています。さらに腎臓は薬物代謝臓器でもあるため、腎臓が悪くなると、薬物が蓄積しやすくなり、容量調節が必要になる薬物や、使用できない薬物が出てきます。

一例として、Onconephrologyという新領域は「がん」と「腎臓」の新しい融合領域ですが、抗がん剤の使用によって腎臓が悪くなることが多い一方で、腎臓が悪くなると、抗がん剤治療が受けにくくなるというジレンマがあり、それを解決するには「腫瘍内科医」と「腎臓内科医」の協力が不可欠です。

私達は腎臓病を入り口として、患者さんのもつさまざまな併存疾患の専門医と連携し、患者さんにとって最も良い総合的医療を目指す役割を果たしたいと思っています。その一環として、2017年より、当院がんセンターに「OncoNephrologyユニット」を開設し、腫瘍内科医の先生方とともに、腎臓病をもつがん患者さんの診療を支援しています。

腎臓病患者さんが増加の一途をたどり、腎臓病学の範囲も拡大を続ける一方で、高い専門性をもった優秀な腎臓内科医のニーズは高まるばかりです。
当科設立時には7名であったメンバーは現在160名と飛躍的に増えましたが、これからもこの魅力ある領域に優秀な若手医師に入っていただければと願っています。

私達は、大学生から専門医、大学院生まで一貫した教育システムを確立しており、腎臓病学の重要性と魅力、研究の面白さを若い世代に伝えることで、腎臓病学の発展に貢献できる腎臓内科医の育成を目指しています。

私達は出身大学にかかわらず、腎臓内科医をこころざすやる気のある医師を広く歓迎しております。若い先生方のご参加をお待ちしています。

教授 柳田 素子:プロフィール

略歴

1994年 京都大学医学部医学科卒業
1994年 京都大学医学部附属病院で研修
1995年 兵庫県立尼崎病院で研修
1997年 京都大学大学院医学研究科入学、2001年3月同修了、博士(医学)取得
2001年 科学技術振興機構 ERATO柳沢オーファン受容体プロジェクト研究員
2004年 京都大学大学院21世紀COE助教授
2007年 京都大学大学院生命科学系キャリアパス形成ユニット講師
2010年 京都大学次世代研究者育成センター「白眉プロジェクト」特定准教授
2011年 現職

受賞歴

2020年 ベルツ賞(2等賞)
2018年 財団法人石橋由紀子記念基金 第一回石橋由紀子記念賞
2013年 American Society of Clinical Investigation, Elected Member
2008年 第21回内科学会奨励賞
2005年 日本臨床分子医学会 学術奨励賞
2004年 日本血管生物医学会 Young Investigator Award
2004年 社団法人日本腎臓学会 腎臓学会財団賞 大島賞
2002年 財団法人成人血管病研究振興財団 岡本研究奨励賞

発表論文

Publication欄をご覧下さい。